ブラッククロス
一瞬で空気が氷つき…。
次いで熱風が過る…。





「蒼の火の真の力をこの目に見せて頂きたく…。」





目は笑っていない。





「貴様何を考えている?」





「綺麗なものが好きなだけですよ?王様…。それに城の中だけなんて窮屈だ。ローズもそう思うでしょ?」





「へっ?」





突然話を振られ困惑していたが…。






もっとこの世界について知りたい。
「はい…。」





「じゃあ決まりだね。俺の店に遊びに来ればいい。マリー…。うわぁ!」





火の玉が振り返る間際に飛んできた。





「冗談だよ。ノアに殺されたくないからね…。なんて。」






本当は飛んでくるのがわかっててあんなオーバーにふるまっているんじゃないかとマリーは思った。





見上げるとノアはバンパイアに戻っていた。





「好きにしろ…。」





そういうとマリーを抱いて窓から飛び降り消えた…。






膝を付いた王がよろけながら立ち上がる。
執事はそれを支えた。






「何故あのような…。」




答えは知っているが言わずにはいられない。






「休みましょう。ネージュ様…。結界が弱まっています。」






壁による風見鶏は言った。





「我を忘れて一つの華を愛でるのもいいけど仕事はちゃんとしなよ…。」





カッ!





氷の針が顔の横を掠れた。





「黙りなさい…。出ないと。」






風が吹いて風見鶏は消えた…。






執事はアイスブルーの瞳を見ていた。
いつも見ていた。






「私がお傍にいます。貴方様の執事ですから。」




何があってもこの方だけは守る。






例え…。奴隷となってしまっても。





命を預けたのはこの方だけ。私の主はこの方のみ。





アイスブルーの瞳が見えた。





「部屋を新調しなければならないな…。」






「お任せください。ネージュ王。」






いつも傍にいた執事はいつも笑っていた。






気づかないふりをしていた。本当は知っている…。
私は…それに答えることは出来ない。
王家の血を背負っていかなければならない。





思えば、いつも欲しいものは手に入らぬ。






焦げた玉座に苦笑した。

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