ブラッククロス
馬車から降りると男の子が出迎えてくれた…。いや、女の子かな?





「お待ちしてました…。旦那様のお客様。ローズマリー様。」





「よろしく、お願いします。ジルさんはいますか?」





「さっきまでいたんだけど…。何処かな?旦那様!お師匠様!」






シーンと静かな店。奥に案内される。




「店のものに触らないようにお願いします。いろいろ仕掛けがあるので危ないですから。」





マリーは手前のアンティークの宝石棚のガラスケースから慌てて手を離した。





「どうぞ。すぐ旦那様がくるはず、いつもいたりいなかったりなんで…。」





中庭のドームが綺麗で、床には宝石のようなタイルがびっしりと敷き詰められていた。





狭い店にしか見えないのに中はとんでもなく広がっていた。





白亜のテーブルにお茶が準備されて、





「美味しいね。貴方が全部?」





「はい。ローズマリー様。」





「マリーて呼んで。貴方は?」





「名前はありません、でも旦那様が俺をレイと呼ぶときがあります…。」





「レイ…。綺麗な名前だね。」





赤くなる。





風が渦巻いてジルウェットが現れた。





焼き菓子をパクリ…。





「旦那様!お客様の前ですよ!」





「はいはい。マリーだからいいのいいの!」





「私もいますが…。」





「相変わらず冷たいなぁ。グラス。」





「お招きありがとうございます。」





「今日はシンプルなドレスだね。ノアに何かされなかった?」





顔が急激に火照るのを感じた。





ふーんと見つめる風見鶏。





「聞くのは野暮だったな。坊主の茶は美味いだろ?美味いだろ?」





「スッゴい美味しいです!」





風見鶏はふんぞりかえる。
綺麗な少年は下を向いていた。
耳が赤い…。






「レイ君?」






風見鶏が驚いた。





「なんで知ってる?」





「?」





「坊主…。」





近寄るジルウェットはレイの肩に噛みついた。





「!」
驚いたマリーは手で口を押さえた。





びくんと痙攣している少年は抵抗せず身を委ねていた。





どのくらいそうしていただろう…。数分だと思う。





驚いたのに…。きっと私も…。
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