ブラッククロス
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「裏切りったのか…。ローズ!」






「違うの!待って!ノアお願いよ。」






炎と煙が辺りに広がっていた…。




そして…。7人の白いローブに赤い床…。





街も建物も全てが炎に包まれる。
荒れ狂う炎…。





苦痛に悲しげな瞳が見えた。赤い赤い瞳。血の涙…。





手を伸ばす細い白い腕…。
重なる体は…。




赤い瞳が最後に吠える。
姿が消えていく。
黒い輝きに…。





悲しげな瞳が空を見ていた。
白い腕空を掴む…。





まるで抱きしめるかのように…。





パタリと力なく落下した。





白いフードは何処かに運んでいく…。





何処へ?






*******





「坊主!」





ゆっくりと長い睫毛が揺れた。
額に緑の光を当てながら風見鶏が魔力を使う。





「旦那様…。」





覚醒した少年は叫ぶ…。「マリー様が!」






「落ち着け。何があった?」





「果酒の行列があり、マリー様と二人で…。店の外に出ました。」






ため息をつく風見鶏。
結界の外に出たか…。






店には様々な結界、呪いの類いが張り巡らされている。





「果酒の行列に包帯の男が混じっており…。マリー様を…。」





匂いに気づいたか…。





「まぁ食われたりしないだろ。」





「!」
今にも泣き出しそうな少年。





「冗談だ…。さて面倒だがグラス頼めるかな?」





「言われなくても…。」




霧となりあっという間に消えた…。





「さて、魔力をここで使うにはヤバイから店に入るか。」





少年を抱き抱えて店に消えていく。






「たく!坊主のせ…。」固まる風見鶏。




「?…。旦那様?」





目の端に写った輝きに絶句した。





「俺ノアに殺されるかも…。」





ギラギラ光るキッチン…。
一つだけ異様な美しい蒼い輝きがそこにあった…。





誰も触れることの許されない。
所有物と所有者のみ扱うことの許されるもの。






主なしに蒼の火は煌々と光を放つ。





まるで何かを探すように。





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