ブラッククロス
***********洋館に不気味な風が音をたてながら通り過ぎる。




目玉でもついているのではないかと思う。






ガタガタガタガタ…。






窓や壁が軋む。





薄暗い一室で動いているのは白い影。





天窓がガタガタ揺れ…。勢いよく割れた。
強風が部屋に入り込み灯りを消してしまう。






灯りは消え、暗がりに光は紅い二つの光と翆の細い光。





「何者だ…。」





火が回りを取り囲み部屋が明るく燃える。





「私のものを返してもらおう…。」





ニヤリッと笑う。





ギョロと動く。片目が紅い瞳のバンパイアと向かい合う。






虚ろな瞳がそれを見ていた。





「ダメじゃないか。お姫様。俺がノアに消されちゃうでしょ?」





風が包帯を切り裂いていく。





声が出ない虚ろな瞳がごめんなさいと揺らいでいた。





「いやマジで消し炭になるとこだったし、坊主には泣かれるし!おまけにグラスに怒られ…。」





悠長に話しているが回りは火の海でそれどころではないはずなのに…。このバンパイアは…。





「店が無くなるとこだったんだぜ!わかってる?!おまけに火を外すから場所探すのどんだけ苦労したか!」





炎に包まれる包帯がうごめいていた。





紅い瞳のバンパイアは不敵な笑みを浮かべまるで楽しんでいるかのように炎で倒して行く。





後退する片目の男は壺を割る。





炎のついた包帯がマリーを襲う。





「「!」」





風の防壁を突破する。





ジルがマリーを飛ばし肩に火傷。





「やけに回復するのが早いね。ミイラ男?」





風が渦巻いて炎を押し返す。





ノアは骸骨に変貌し、タクトを振るように炎を操る。





無言で消し炭どころか再生しないような炎で全て灰にしていく。





最後に手を伸ばし消えていく。





マリーの耳に残っていた言葉に。唇の感覚に身を強張らせた。
「お前は人間か?」






薄い意識の中で見たのはあの瞳。





首に青い輝きが落ちる。
炎に包まれる体は暑くはなかった。





包帯と甘い匂いが無くなる。





代わりに落ちて来たのは白い牙。





誘惑に負けた獣が欲した青い薔薇。



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