ブラッククロス
覚醒させた。
あのゾクゾクする感覚に体が火照る。





目を開けたら欲した瞳と目があった。





「ノ…ア…。」





体がぴくんと跳ねる。





首から離した唇は構わず体を這っていく。





白い体に紅い華が咲いていく。




無言の獣は何もかも見ていない。





翡翠の瞳が消えていた。




「ローズマリー…。」





囁く低い甘い声。





涙が出た。





「寂しい…。」





そのまま身を委ねた。





過去を見たとは言えなかった。




ただ自分は代わりなの?と…。





何処かで呼んでいた。





確かに最後に彼女は私…を見たの。





「彼を助けて…。」






そう聞こえた。





私に何ができるの?
寂しい…。
怖い…。
独り…。





*******





気配を追って来たが…。





在り来たりな沼地だけ。




破片が飛び散っている。





沼地に沈んでいる人影がある。





「やぁ…。水遊びかい?」




緑の光を当てながら。弱々しい執事に安堵した。
「貴方とは…。ごめんですね…。」






「誰にやられた?」





「赤髪の神父…。」






抱き上げながら
「君がここまでなるなんて珍しい…。そんな獲物らしいね…。」





「気をつけて。」





「そんなグラスも好きだけど…。今は眠れ。」





グラスは目を閉じた。
「マリー様には言わないで…。」






「はいはい。」





悔しいけれど、この風見鶏を今は信じよう。





風が消えていく。





闇の世界に潜む白い光…。





先に見えるのは崩壊する世界か…。




獣は再び吠え叫ぶ。





炎に包まれる世界は破壊。




破壊しか知らぬ獣は再び目覚め…。





世界は闇の闇に。





薔薇の願いは届くのか。




境界線が崩壊する時、世界に殺戮の獣が解き放たれる。





白い十字架の下に眠る力を知った時、運命の薔薇が動き出す。





セブンハウンドが吠える。





再び封印をと…。






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