ブラッククロス
「私は殺されるのね…。」
中央教会の白い番犬。
いわゆる異端者を掃除する。






もう一人きり…。
「私が許すわけがないだろう。」






影が揺れる…。私の耳元が熱を帯びる。






目を上げれば
「ノア…。」






ハイグレーの髪のバンパイア。漆黒の瞳は明るく笑う。






首筋に口づけをして血を吸い…。
私は恐怖と快感が入り交じる。






抱き締め抱えて走る。
「何処に行くの?」






「奴等は追ってくる。」





涙が止まらなかった。
涙を拭いながら頬にキスをするノア…。






「奴等の好きにはさせない。」






「あなたは…。ノアは何者なの?」
真っ直ぐ見つめてた。聞かずにはいられない。






「教会の恐れるバンパイア…。ただそれだけだ。」






「どうして…。」






質問は口づけで塞がる。嫌じゃなかった。自然と受け入れた。
私は…。血を吸われることより孤独が怖かった。
ノアは綺麗なバンパイア。血を吸う怪物。それでも何もなくなってしまった私には…。






「私が怖いか?」
わざとらしく牙を見せる。





「怖くない…。」






「そうか…。」
どうして悲しそうな顔をするのかしら。面白そうに訪ねるのに…。






******






契約者…。意味は餌になるということ。






あの女…。ブルーローズと同じ香り。
血を吸いほころんだ封印を…。また人間は私を閉じ込め従属させようとした。






全てを壊してしまおう。
封印は簡単に開いた。目の前の人間を壊してしまいたい。
首筋に近づいたが紋章に阻まれた。






結局、ブルーローズは私の傍にいる。
枷も自由も、私は…。孤独な見捨てられた王。
聖女と言われた…彼女しかいらない。






「この身は彼女が為に…。」
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