ブラッククロス
怒れる獣は炎を纏い。






死者とは呼ぶには悲しいか…。腐れる遺体の兵団を引き連れるように進んでいく。





怒れる獣は今は盲目。






通り過ぎては灰になる…。





********





魔女の繋がりにセブンハウンドが境界線にたどり着く。





それに気づいた闇の住人達…。
慌てふためく者。勇む者。叫ぶ者。






「何故ここがわかったのだ!?」





「そうだ!」
「そうだ!」
「そうだ!」





「奴等を喰い殺せ!八つ裂きにしてしまえ!」






変化し勇む者。






逃げ惑う者。






全ては境界線にたどり着く。





恐ろしい音が近づく。地鳴りのように…。





ザッザッザッザッ!!





白き6つのフード。





掲げるは白い十字に赤い薔薇のエンブレム…。





銀の鎧を纏い赤い衣を翻して進む精鋭部隊…。





その前に一人立っていた…。




カミソリの瞳は真っ直ぐ見ていた。
「ジョーカー…。」






青く光る瞳…。
「エグル…。」





「白き魔女よ。何故だ…。」





「闇は…。敵ではありません。」





「化け物に味方するか…。」





銀の光が大きく円を描いて拡がる。





「ここから先は行かせません。」





猛禽の瞳が魔女を射る。
「しかたない…。」
銀の槍を掲げ…。手を振り落とす。






先頭の騎馬隊が真っ直ぐ向かって来た。





だが強力な結界に阻まれる。銀の後輪が輝く。
丸で聖母の後ろに羽があるかのごとく…。





手の内は知っている。






どちらも同じ…。





騎馬隊が後隊に回り、銀の矢が降り注ぐ。





結界は精神力で更に拡充され…。
その矢は折れていく。






彼女はひたすら守り抜く。





動いたのは…。






セブンハウンド。






「ローズ…。戻って来ないの?」
悲しげに少年が言う。






「ウ゛ィダー…。」





金髪に二色の綺麗なオッドアイ…。
少年も同じく、使命ならと…。
唯一、心を許したシスターに…。





光の一閃を放つ。






煙がゆっくり幕をあける。少年は知っている。彼女の守りは…。自分の力の及ばないことを。




唯一結界が揺らぐなら…。


鷲が狙いを定める。

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