ブラッククロス
長い槍を掲げ…。
狙いを定めた鷲が銀の盾に突き刺さる。






拮抗し合い、チリチリと音が響き渡る。





互いに一歩も退かない。




「生きるか死ぬか…。ただそれだけしかないのだ。闇の存在…。ただ消えていく、それだけなのだ。お前もわかっているはず…。」





そう、守らなくてはならない闇から…。ただそれだけと思っていた。





「エグル…。世界は…。広いことを知ったのです。闇は…。ただ闇であるだけではないのです。だから、私は…。」





ふっ…。と一瞬笑った…。
絶対に顔色の変わることのない男が…。





「お前と私は…。何処か似ている。決めたことは曲げない。」





力が強い!





銀の結界ごと押される。
「くっ…。」
この男はいつでも正しい…。真っ直ぐ前だけを見ている。





鷲が何かを合図に…。フクロウが犬と共に動いた…。





後ろから無数の声が聞こえた。





境界線を越えて…。勇む異形…。闇の住人が向かって来た。




「いけない!」
ダメよ!





鷲の冷たい瞳が見えた瞬間。





銀の弾劾が雨のように降り注ぐ。
銃声が轟いた。





銀の盾を解き…。銀の後輪が拡がる。





槍が肩を掠めた…。






銀の雨は地面を赤く染めていく。



間に合わなかった薄い結界部分…。
銀の玉が結界を通り抜ける。





それは白い魔女と闇を赤く染めた…。






カチリ…。





長槍を構え直し、倒れ込む魔女を狙う。






絶叫のような不気味な咆哮が聞こえた。






一体が灰と化し…。銀の銃部隊が消えた。






「これは…。」






火の海にゆらりと立っていた。骸骨を睨み付ける。





正に悪魔がそこに現れたようだ。





「化け物が…。」





火の粉を銀の長槍で払う。
大きな槍は弧を描いて聖なる光の弧を飛ばす。






悪魔は何事でもないように払い除ける。





次々に聖なる光の弧が飛んで来るが炎に飲み込まれていく。





「奴はサタンか…。」






くっくっ…。





笑っていた…。






戦いを楽しむように…。




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