ブラッククロス
突き抜けた鏡の破片は豪奢な金の額縁に縁取られた一つの大きな鏡となる。





無垢な魂がそこから現在へと誘われ出る。






ゆっくりと目が開く。






「ここ…。」






全てが白いドアも窓もない部屋。





中央に一つだけある箱。





静かに…。ゆっくり近づいた。
箱に触れる。






白い箱が溶ける。






「!」
悲鳴は声にならない。
変わりに涙があふれでて止まらない。
胸にある小さな十字架を握りしめ…。
勇気をもらう、ジーナ…。





石膏の像…。





「ローズ…。」






ローズマリーだからわかったのだろう…。
遺体がこの中にあるのだと…。
今ならわかる。
魂の共鳴というのか…。しっかりと見なければならない。
魔女の力を天に召された彼女の遺体に何かを施したと…。
生きた化石のように…。
中央教会の守りの為に…。





それに更に触れようとした。





「ダメよ…。」
凛とした声に半透明な手が触れようとした腕を止める。





「ローズ?」





「それは歪んだもの。開けてはならないパンドラの箱…。」






ローズを抱き締めた。





何故だかとても悲しい。




「私にはもう何もできない。あの男はきっと…。歪んだ力で闇を消そうとしている。貴女の体と血を使って…。」






優しく撫でる手が暖かいのに瞳は悲しげで…。
「あの呪われた箱に貴方を使わせない…。きっと守るから…。」






凛とした声。
とても心地がいい…。





「あまりに離れ過ぎたわ…。戻って、ローズマリー…。これから…。」






体が落下する感覚の次に痛みが走った。






「痛ったぁ!」
頭と腰を打った。
擦りながら立ち上がる。回りはさっきと同じで白い部屋。





そして、白い箱。






でも…。さっきと何かが違う…。
不穏な空気が…。
思わず後退りしてしまう。





開けてはならないパンドラの箱…。




ゾクリと悪寒がする。
さっきまでの暖かさはない。
白いただの箱…。





開けてはならないものを人は開けてしまう。
禁忌を犯す…。






高貴な薔薇は香り高い。贄には相応しく…。
歴史は繰り返すのか…。





獣は進む。
鷲は禁忌を犯す…。





「クルセイドを発動せよ!!」





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