ブラッククロス
あぁ…。神様…。
私にはもう何もできないのですか?
また独りでいなければならないのですか?





世界は…消えていく。






「まだ…。ローズマリー…。出来る…。」






天使の声が聞こえた。






時が止まる。
セピアの世界とモノクロの世界が繋がっていく。





愛しいバンパイアは十字架の前で血の涙を流す。





誰かが前にいた。





あれは…。ローズ?






違う…。
闇でもなく…。
人の形をした何か…。






それはゆっくり此方を向いた。





黒い波が押し寄せる。






銀の波が押し返すも揺らぎ始める。





飲み込まれる!






「マリー!早く…。ノアを…。」





目の前に腕が見えた。
「ローズ!」





「早く…。」






ローズが飲み込まれていく…。





「ダメよ!ローズ!」






再び消えていく。
天使の声が聞こえた。






「私の…。闇の獣を助けて…。きっと。」






「いやぁぁぁ!」






トプン…。






それは…。言った。
「まだいたか…。」






人の形をしているのに…。人でもなく。声はあの男の声がする。
姿はローズなのに…。





おぞましいというべきか…。それとも。






それは…。ノアに語りかける。





「壊れてしまおう…。ネェ…。ノア?」






違う…。それは…。ローズじゃない…。






「止めて…。」






それは…。ノアに口づける。体を滑らせながら。





「ノアー!」






それでも愛しいバンパイアは動かない。






******






「そうだ…。その力で闇の巣窟を滅する。我に従え…。」




魔女が命がけで作り出した、古の方法…。
銀の天盾を破壊する為…。
白き魔女をこの手に…。





「さぁ、君の番だ。異端者ローズマリー…。これから始める為に…。」






鷲は禁忌を犯す…。






真っ直ぐ前だけを見ている。





意志の強さ故に…。愛するがゆえに…。
禁忌を犯す…。





信じるもののため…。
先に見えるものはなんなのか…。
見えるものが見えなくなる。





人は弱い。
何かにつけてすがりたい。
ただ唯一の未完成で産まれる人という生き物故に…。





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