ブラッククロス
闇の紛い物は泥々と這いつくばった。
「何が出来る?ここから出られはしない。大人しくその身を差し出せ。」




「嫌!」





蒼い炎がマリーを守る…。





「ネェ…。それとも…。また私を殺すの。ノア…。」





「黙れ…。」





「ノア…。こっちよ。ネェ…。」





セピアの世界が揺らぎ始める。





ガシャン!





夢との狭間はモノクロの世界へ。





漆黒の瞳のバンパイアの前に紅い瞳の獣が立っている。





「クック…。きっと来ると思っていた。」
紅い瞳が言った。





「…。」





「全てを灰に…。」






「黙れ…。」





鼻を鳴らしながら獣は笑うと
「黙れ?お前は私だ。いい加減に認めろ。」






獣の横を鋭い爪がかする。





「亡者の力を受け継ぎし破壊者よ。孤独な王よ…。」





獣がバンパイアの首元に噛みつく。





「がはっ!」






「お前は私だ。」






ガシャン!





「ノアに何したの?!」





「何もしてないさ…。ローズ早く…。」





「私はローズじゃない!マリーよ!」






「ローズ…。」
泥々と這いつくばって抱き締められる。





「いや!止めて…。」





抵抗するもそのまま飲み込まれていく。
口づけが降りてくる。





「んっ!」





蒼い炎と銀の光が揺れる。
ノア…。





小さな十字架を握りしめながら、叫んだ。
「私はノアを信じてる!」






突然現れた大きな鏡が割れる…。





息切れ、膝をついては蒼い炎に包まれるバンパイア。
瞳は赤と黒。





「それは…。私のものだ。」





もう…。きっと放しはしない。





紛い物ごと華は、
白い箱に吸い込まれていく…。





「ノア!お願い…。燃やして!」
私に出来ること…。





「!!」





紅と黒の綺麗な瞳が見えた。
バンパイアの細くて長い指が持ち上がる。






青く光る炎に包まれる。




これでいいよね…。
目を瞑る。
さよなら…。ノア…。





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