ブラッククロス
黒い十字架に吸い込まれていく…。
紛い物と銀の天使。






白い箱から伸びる棘は止まらない。





「マリー…。マリー…。」





凛とした声が遠くで聞こえた。





「まだ終わってないの…。闇の獣を助けて…。きっと。そして、闇の世界を…。」





頭に流れ込むのは闇の世界…。境界線…。
スノードームのような闇の世界…。





王様…。グラス…。ジルさん…。レイ…。






「マリー…。最後のお願い。私を殺して。いえ…。私の体を燃やして。私の願いを叶えて…。ここから出して…。」





銀の天使の悲痛な顔が見えた。





「私に自由を…。私の願いを叶えて…。そして、闇の獣を助けて…。」






棘は速度を遅くすることもなく広がり続けていく。





私には…。






戸惑っていると棘が此方に向かって来た!






両目を瞑る。






何も…。起こらない…。






バンパイアが目の前に立っていた。炎に包まれる美しくも恐ろしいバンパイア。





いつだったか…。不敵に笑うと手を掲げた。





「私のものには触れさせない。」





青く光る炎に包まれる聖女は黒い十字架に祈りを捧げる…。





白い箱には白いシスター服の女性が眠っていた。





近づいて声をかける…。





「ローズ…。ブルーローズ。」





胸元の赤い一輪の薔薇がバラバラと散って行く。





フワリ…。






銀の天使がうっすら浮かび上がる。






声は聞こえない。
唇が震えていた…。






「ありがとう…。」






気のせいかもしれないけれど…。






黒い十字架に祈りを捧げる…。
所有物を守る…。青く光る炎が白い箱を燃やして行く。





だが太古の魔法は…。発動したまま…。
一度発動したものは終わるまで…。止まらない。





呪いの棘は天へ昇る。






魔方陣の先には闇の境界線…。





止めないと!






「ノア!力を…。力を貸して!」






紅い瞳のバンパイアが目の前に立っていた。





不敵に笑うと噛みつくようなキスをする。






「後悔するなよ?」






「しないわ!私が決めたから!ノアを信じてる。」





ニヤリッと笑うと
首元にグサリと深く牙が突き刺さる。



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