ブラッククロス
それから…。言葉や食べ物…。闇の世界について学んだ。
呪いや魔力…。呪文…。





そして
バンパイア。






「俺の名はジルエット·ラファール。お前の主人だ。」





「はい。お師匠様…。」





耳にあまがみするバンパイア。





風が吹いて、何処からか耳飾りを出現させる。






顔に掛かる髪をすくい、片方を着けさせる。






そして耳元に囁いた。
「お前の名前はレイだ…。意味は輝く光。どうだ?気に入ったか?」






「はい。旦那様!お師匠様!」






輝く笑顔で言った。
少年は翡翠の瞳のバンパイアに抱きついた。






くしゃりと頭を撫でるバンパイアについていく。





闇の生き物。
闇の世界。






幸せの形はわからない。
己が幸せだと思うなら、それが真の幸せ。






少年は幸せだと思った。





風は気まぐれに何処かに消えることがたびたびある。





風見鶏は何日も帰って来ないことがあった。
それでも少年は待ち続ける。






繋がっているのを知ったから。






秘密の名前はレイ…。






髪に隠すはビックジュエル…。宝玉のついた耳飾り。
風の宝玉。
聴こえるのは風の音。






そして糧になる契約。






それでも少年は幸せだと思った。
自分の居場所を見つけたから。






風見鶏は気まぐれ。






真面目かと思えば軽くおどけてちゃかしたり…。それでも風は暖かかった。





暗闇に風と光をくれたのは。





翡翠の瞳のバンパイア。





*******






店の中庭で少年は空を見上げながら一人立っていた。






霧が広がっていく。






「まだ来ないのですね?」
燕尾服の執事が近づいた。






「いつものことですから…。旦那様は気まぐれなんです。風みたいな人ですから。」






「ふふ…。そうでしたね。あなた…。大人になりましたね。」






「えっ?」






「内緒です。私が怒られてしまいそうですから。まったく、何処をほっつき歩いているのでしょう。」






氷の双剣を出現させながら…。






「風の…。話でもしましょう。」






それは過ぎ去った風の話…。






歴史に刻まれた。
一人の暗殺者の話…。







< 94 / 133 >

この作品をシェア

pagetop