【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
女の手に握られたコップの破片。
尖った先が怪しく光る。
「ねぇ・・・返して・・・琥珀を私に返してよ。」
泣く訳でもなく、怒り狂う訳でもなく・・・
ただ同じ言葉を繰り返し、コップの破片を握りしめゆっくり翡翠に近づく。
女の手のひらから流れ出た血で破片がうっすら赤く色づく。
「ねぇお願い。」
足が震えて動けない翡翠に懇願しながら一直線に迫りよる。
女が腕を伸ばせば翡翠に届く距離。
翡翠は目を閉じた。
「ぃったッ」
身体に走る痛み。
でもそれは身体を貫く痛みではなく突き飛ばされたときに生じた痛みだった。
「キャ―――!!」
翡翠の叫びが部屋中に響く。
目を開けた瞬間に飛び込んできた光景の中には、腕から赤い血を流す琥珀と、ただ茫然と立ち尽くす女の姿があった。
「こ・・・はく・・・わた・・・し・・・イヤ―――」
最愛の人を傷つけた女のショックも計り知れない。
血に染まった手のひらの破片が床に落ちた瞬間、女は頭を抱え叫ぶ。