【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
夫人の言葉を一度に理解することは翡翠には無理に思えた。
翡翠はテーブルに置かれた封筒を手に取ると夫人に微笑んで見せた。
「分かってくださるのね。物わかりのよろしい女性で助かりましたわ」
「えぇ分かりましたわ。 あなたが守りたいのは木崎君の幸せではなくて神崎グループだという事が。 私からは別れません。 木崎君がどうしても別れたいと言うのであれば私は身を引きます。 それが彼が望むことなら・・・」
翡翠は自信満々の笑みで封筒を夫人の前に差し出した。
「なんて図々しいの。あの子が神谷グループの後継者と知って惜しくなったのね。財産狙いでしょう?」
「何とでも言ってください。 私は木崎君から別れようと言われたら別れます。第3者の意見に振り回されたくないだけです。」
翡翠は込み上げてくる怒りを必死に抑え込んでいた。
そんな翡翠を前に物静かだった夫人が怒りを露わにする。
このままで済むと思えないほどの形相で夫人が翡翠を睨みつけ部長室を後にする。
その後ろ姿を部長が追うような状況で。
翡翠は怒りと同時に情けなさと不安と・・・
色んなネガティブな感情が込み上げていた。