【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
「翡翠・・・ よかったよ。」
行為を終わらせた彼が指と指を絡ませながらわたしの耳元でささやく。
彼の薬指、指輪が目に入る。
いつ頃からだろう。
彼が一緒にいる時間も指輪を外さなくなったのは・・・?
社交辞令に思えるいつものセリフを聞きながら、シャワーを浴びに行く彼の背中を翡翠はベットの中から見つめていた。
火照った身体と裏腹にスーっと冷めていく感情を翡翠自身も感じていないわけではなかった。
だからと言って傷ついてなどいない。
なぜなら翡翠が男に求めているものは愛情とか結婚とは違うものだから。
「翡翠、帰るよ。」
ベットの中の翡翠に視線を向けながら男は慌ただしく着替えを済ますと部屋を出ていく。
「うん。気を付けて」
終電に間に合うように必ず部屋を後にする男が帰って行ったことを確認すると、やっとベットから起き上がる。
全裸のままベットを抜け出し、冷蔵庫のミネラルウォーターを手に取り喉を潤す。
残ったミネラルウォーターをテーブルに置くと、今まで男がいた証のように男が吸った煙草の吸殻が目に入る。
男のために用意した灰皿。
初めて男が部屋に来た時、灰皿がなくキッチンに捨てられたことを思い出した。