【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
翡翠は両手にスーパーの袋を抱え琥珀の部屋へと急いでいた。
怒りもこみ上げたが考えてみたら琥珀の言う通り何が理由であれ約束を破った自分が悪いと考えたからだ。
「俺の家に先に帰って待ってて」
会社を出る前に琥珀に言われていた。
今日はどうしても琥珀が帰ってくる前に夕食を作って出迎えたかった。
家ではまともに食事をしない琥珀に少しでも栄養のあるものを食べさせてあげたい。
どことなく母心にも似た感情。
琥珀の生い立ちは翡翠の母性本望をも鷲掴みにしていた。
普段使われていないキッチンに調味料を並べる。
ほぼ何も入っていない冷蔵庫には保存食を入れていく。
そんな時間さえも翡翠を幸福感が満たしていく。
ずっと前に忘れていた。
誰かのために料理を作ることもだれかの帰りを待ち焦がれることも。
テーブルに用意された料理からは湯気が立ちご主人様のご帰宅を待ちわびている。
カーテンの隙間から外を眺め携帯片手に琥珀の姿をさがす。