【短編】阿呆と馬鹿の関係
「悪いけど、ちょっと退いてくんないかな?」
――カタンッ
そう言うと持たれていた背中を退けてくれた。
やっぱり、謝るキッカケをくれただけだったんだね。
あれは、あたしが悪かったのに……柚木やっぱり優しいね。
ドアに手をかけたその時だった。
「なぁ、お前……」
え?
あたしの隣に立った柚木に腕を捕まれた。
ゆっくりと顔をあげるとグィッと下に引っ張られ、あたしの頭をもう片方の手が押さえつけた。
ななななな、何!?
「ちょっ…んんん」
今度は声を出そうとする、あたしの口を抑える。
「静かにしてろっ」
耳元で囁かれ、完全にテンパっちゃったあたしの耳に聞こえて来たのは足音。
あたし達のいる、開き教室の前を通り過ぎる足音は、多分先生だろう。