【短編】阿呆と馬鹿の関係
なーんだ。
それに気づいたから……コレね。
塞がれた口。
抑えられている頭。
髪にかかる柚木の息。
苦しいくらいに柚木の匂いが香ってくる。
――ドキドキドキドキドキ
少しずつ小さくなっていく足音と、煩いくらいに聞こえるあたしの胸の音。
こんな至近距離で気づかれちゃわないか心配になればなるほど、煩くなっていく。
足音が聞こえなくなる頃には、あたしの心臓はバクバクしていた。
「あー……行っちゃったみたいだね。
あ、ありがとっ、助かった」
早く柚木から離れたくて、塞がれた口に当たる手を退け押し返した。
もう片方の頭の後ろにあたる手も退かそうとするのに、離してはくれない。
「ゆ、柚木?」
あはっ、と空笑いをしても柚木は目を合わせてくれなくて。
これって……どういう意味?
首を傾げて、柚木の顔を見上げた。