【短編】阿呆と馬鹿の関係



なーんだ。


それに気づいたから……コレね。


塞がれた口。

抑えられている頭。

髪にかかる柚木の息。

苦しいくらいに柚木の匂いが香ってくる。


――ドキドキドキドキドキ


少しずつ小さくなっていく足音と、煩いくらいに聞こえるあたしの胸の音。


こんな至近距離で気づかれちゃわないか心配になればなるほど、煩くなっていく。

足音が聞こえなくなる頃には、あたしの心臓はバクバクしていた。


「あー……行っちゃったみたいだね。
あ、ありがとっ、助かった」


早く柚木から離れたくて、塞がれた口に当たる手を退け押し返した。

もう片方の頭の後ろにあたる手も退かそうとするのに、離してはくれない。


「ゆ、柚木?」


あはっ、と空笑いをしても柚木は目を合わせてくれなくて。


これって……どういう意味?
首を傾げて、柚木の顔を見上げた。



< 22 / 58 >

この作品をシェア

pagetop