【短編】阿呆と馬鹿の関係
「なぁ、ここでキスしたらどうする?」
……、……は!?
まさか、そんな言葉が返ってくるなんて思ってもみなくて。
大きく開いた目と、ポカンと開いてしまった口。
だけど、笑ってない柚木の顔を見ると、言われた言葉に顔が一気に赤くなるのがわかった。
「何も言わんねんやったら、してもいいってこと?」
ちょっ、
柚木はニッて笑う。
ちょっ、
だんだん近付く顔。
ちょっと、
柚木の唇しか目に入らない。
「ちょっと待ってっ!」
数センチ、後ろへと下げた顔。
少し顔を傾けた柚木と目が合った。
「やっぱ、アカンってことか」
「へ?」
「何驚いた顔してん。冗談や、冗談」
「は!?」
「お前、さっきから、“へ”とか“は”しか言ってへんやん」
「なぁっ!」
「あ、今度は“なぁ”や」
ケラケラ笑う柚木に一気に怒りがわく。
「冗談でそんな事しないでよねっ」
驚き過ぎて立ち上がれなくなってしまったあたしは、まだ柚木とは近い。
だけど、精一杯の強がりで言葉を返す。