【短編】阿呆と馬鹿の関係
「じゃ、取り合えず歩くか」
そう言った柚木の手が、そっとあたしの手に触れた。
その瞬間、バッと手を避けてしまったあたし。
驚いた表情を見せる柚木に、あたしの目が泳ぐ。
「あ……ご、ごめ…」
「……行こ」
「えっ。あ、ちょっと待って…」
今のは……
その続きの言葉をグッと飲み込んだ。
だって、
緊張して掌に汗をかいてて繋ぐのが恥ずかしかった。
その言葉を言う方が恥ずかしいよ。
そんな自然な形で手を繋ぐのなんて初めてだったじゃん。
いつもは、柚木が手を差し出してくれるから、汗だって拭き取れたし。
でも今は無理だったんだもん。
先々歩く柚木に必死について行きながら、何だか泣きそうになる。
上手く付き合えないあたしの事、嫌になっちゃったかな。
友達の期間が長くて、どうしても今の状況に馴染めない。
多分、柚木は“友達と彼氏”をちゃんとわけてるんだと思う。
でも、あたしは。
今まで通り、友達の関係じゃ駄目なのはわかってる。
わかってるんだよ、柚木。