【短編】阿呆と馬鹿の関係



「瀬名、ゲーセン行こか?」


小走りに追いかけるあたしの方へ振り向いた柚木が、笑って言ってくれた。

それだけで、もっと泣きそうになる。


「うんっ!」


それだけで嬉しくて、大袈裟なくらいに首を縦にふった。


「あ、俺このゲーム好きやねんっ」


そう言って、指差したゲーム機を見てウズウズしてる柚木。


格闘系のゲームだとはわかるけど、普段ゲームをしないあたしからすれば隣にあるゲームと何が違うのかわからない。


「柚木やりたいんでしょー」

「え? ううん。今日はデートやしなっ」


うぅ。

ヤバイ。

またヤラれた。


ハニカんで笑うと、いっつも口角があがるその顔にキューンときてしまうんだ。


「いいよっ! あたしゲームしてるのを見るのが好きだから、やってよ。ね?」

「でも……」

「ほら、早くー!」


もうひとつ椅子をゲーム機の横へ並べると、先に座って手招きをした。


「おう。なら1回だけな!」



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