【短編】阿呆と馬鹿の関係
「瀬名?」
「えっ!?」
「どーかしたんか?」
「えっ? あ、うん。山先に見つかるとか本当バカだよねー」
笑って言う、あたしの顔は引き攣ってたと思う。
だけど、柚木は気づきもしないで
「うっせーわ、アホ。お前がボーっとしてたら、焦るわ」
なんて笑っていた。
何で、焦るのよ。
それに、あたしはボーっとしてたわけじゃないもん。
焦った姿を、ボーっとしてるように見る柚木って、本当にあたしの事を見ていないんだろうな。
「焦るって何よ」
「んぁ? いっつもウルサイお前が静かやったら心配やん」
って、えぇぇ?
し、心配って柚木の口から出たの!?
驚いた顔をするあたしを見ながら、ケタケタと笑い
「変な物でも食ったんかと思ってな」
って、おい。
変な物って何よっ!
あたしは、そんな食いしん坊キャラじゃないわよっ!
睨むあたしを、やっぱり笑って見てる柚木は席に座り、飛び出したピンク色の封筒に気づかず学ランを着てしまった。
あたしといえば、その封筒が落ちちゃうんじゃないかって不安でドキドキ焦って。
何で焦ってるのかわかんないんだけど。
落ちたって『落ちたよ』って拾ってあげればいいだけの話。
封筒は、上手い具合に学ランのポケットに再び納まった。