ヴァイブ
…琴子の言葉の重みを

私は、これから…

知る事になる―――


「悪かったな。
翼とのデート邪魔して。」

一曲も歌わずに、カラオケ屋を出ると

外は既に明るくなっていた。

「別にいいよ。
翼も七海の事、可愛がってるし。」

「それは、どうも。」

「ついでに、報告しとく。」

「何?」

「私、翼と結婚する事になったから。」

「はっ?マジで?」

「マジ。そのうち結婚式の招待状が行くから。」

「そうか。おめでとう。」

「ありがとう。」

「じゃあ、また何かあったら連絡して。」

「うん。」


琴子は、手を小さく振ってから、

少し先に立ってる翼の所へ歩く。



…結婚。

突然過ぎて、ありきたりな反応しか出来なかった。


めでたい事なのに、心から喜べない。

それは、琴子が離れていく気がしたから。

置いていかれるんじゃないかと…

寂しくなったから。


琴子を完全に翼に取られたと思うと

少し悔しい。


仕方ない…事だとわかっていても。


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