ヴァイブ
顔さえ合わさなきゃいいや。


玄関のドアを閉めて、玲二についていく。


「七海。はい。」

映画館へと向かう最中、玲二が手を出して来た。

「…?何?この手は?」

「手、繋ごう。」

「は?ヤダよ。」

「何で?」

「暑苦しいからイヤ。」

「大丈夫だって。」

「何が?」

「七海のその冷たさと、俺の情熱の温かさで程良い温度になるよ?」

「意味わかんねぇ…」

変な事言う玲二の横を通り過ぎて

スタスタと前を歩く。

すぐに玲二が追い付いて、半ば強引に私の右手を掴んだ。

「コレでよし。デートっぽいしょ?」

玲二は満足気に言う。

「……。」

無言で振り払おうと、ブンブン上下に振るけど

玲二の力が強くて払えない。


…諦めて、そのまま歩く事にした。


イヤなハズなのに…

胸の辺りが変にもごもごと

何かが駆けずり回ってる…


「何か…ムカつく…」

ボソッと言うと

「何が?」

すぐに玲二が反応した。


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