ヴァイブ
「何でもない。」

言いながら、繋いでる手を

少しだけ握り返す。


映画館に着くと、平日の昼間だからか

そんなに客はいない。

「見たい映画、思い出したの?」

玲二を見ると

「う~ん…忘れたからアレ見よう。」

玲二が指差してたのは、今の時期にピッタリ。

テレビでバンバンとCMをやってる話題作のホラー映画だった。

「七海。怖いのキライ?」

「別に、霊とか信じてないし。」

…とか言いながら、ホントはこういう話しは大っっ嫌いだ。

見たくないけど、ソレを口に出したら

バカにされるかもしれないし…

「そっか。じゃあ決定。券買って来るから待ってろ。」

玲二は、繋いでた手を離して、チケット売場へと歩いて行った。


その間、見ると言うホラー映画の看板を眺める。


『恐怖がアナタの後ろに……』

血文字で書かれた後ろに、この映画の主人公が、
ものすごい形相で目を見開いて怯えてる顔…


『ハ ヤ ク … 』

おまけに吹き出し…

テレビの特集でマジで怖いとかやってたよな…


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