ヴァイブ
沈黙…の中で、

「Sexがしたい。」

この言葉は無意識に出ていた。

「えっ?」

驚いた声を出す玲二の顔は見てなかった。

ただ…

「Sexがしたい。」

を繰り返してた。


「Sexがし…」

繰り返す内に、出始めた涙。

ボロボロに泣く私に玲二が頭を撫でながら

「悲しい涙、辛い涙は全部出せ。」

そう言ってくれたから、私はとことん流す。


この涙と一緒に

今日、見た事も流してしまいたい。

流す。

流す。

…忘れたい。

イラナイ記憶。

イラナイ。

お母さん。

忘れてしまえば、いいんだよね?

私が忘れてしまえば…

お母さんは何もしてない事になるんだよね?

私は、何も見てないよ…?

忘れるから。

忘れるから。

見た事は、全て全て忘れるから―――



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