ヴァイブ
「……。」

私は答えなかった。

「七海に恨まれても…七海まで手放したくはなかった…。」

「えっ?」

父のグラスを持つ手は少し震えている。

「母さんが…浮気した原因は、父さんにもあったんだ。

でも、たった一度だとしても…裏切られた事を許せる程、父さんは強くなかったんだ…」


「どういう事?」

「父さんは…母さんを愛してた…」

震える手で、また蛇口から水を出す。


グラスが満杯になって、水が溢れ出してるのに

蛇口を閉めずに流れる水を見る父。


「愛してたんだ…」

キュッと蛇口を閉めて、満杯に入ったグラスを流し台に置いた。


「ねぇ…全部…教えて…

お母さんとお父さんの間に何があったのか…」


私は、母が他の男とSexした理由が知りたかった。


「そうだな…。」

父はタオルで手を拭いてから
リビングのソファーに腰掛ける。

私も父と向かい合って座った。

「ふー。」

と息を吐き出してから、父は話し出した。


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