ヴァイブ
「自分で陽子(ヨウコ)を失う事を選んだけれど
七海まで俺の側からいなくなったら…
父さんは、生きていけなくなると思ったんだ…。」

両手で顔を覆いながら、

父は声まで震えてる。

陽子と言うのは母の名。


「だけど…

七海を引き取ったものの、

七海は父さんより母さんになついていたから
いつか、七海から母さんの所へ行きたいって言われる事を考えると…

陽子以上に七海に依存してしまったら、
七海の意志も無視して、自分勝手に縛り付けてしまいそうで…

七海と距離を置くようになってしまったんだ…」


それが…帰りが遅くなって、酒の匂いがしてた理由なんだ。

父を見ながら、

だんだん悲しくなっていった。


「七海が、友達の所に暫く住むと言った時、
底知れぬ不安が襲ってきた。

友達じゃなくて、
本当は陽子の所に行ったんじゃないかって…」


それで…

あんな予想外の反応したんだ。


「七海…
ごめんよ。
あの時、父さんが母さんを許してれば…
原因を作ったのは父さんなのに…

許せずに、七海から大好きだった母親を奪ってしまって

ごめん…」


震える声に、隠しきれずに流れた涙を見て

父を責める気にはなれない。


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