ヴァイブ
玲二の家の玄関を開けると

その音を待ちかねた様に玲二が出迎えに来た。


「おかえり。七海。」

何も、言わずにいつもの玲二だ。


「ただいま。」

靴を脱いで、家に上がる。

―と、玲二が私を抱き寄せた。


「帰って来て、よかった。」

小さな声で言われて

「うん。」

頷いた。


「玲二。」

「なした?」

「話したい事があるんだ。」

「何?」

「あのさ…」

「うん…?」

私が話しかけると、

「ここじゃなんだから、部屋に行こう。」

の玲二の言葉で玲二の部屋へと移動した。



ベッドの上に座りながら私は話しを始める。


「玲二は、六年前に私と会った事…覚えてる?」

「えっ?」

玲二は、少し驚いた表情を見せながら
目を泳がせた。

何かを考えながら黙っていたけど
優しい目で私を見た。

「…覚えてるよ。
六年前。七海と会った事。
七海が何も言い出さないから、俺も言わなかった。」


そうなんだ。

私は、玲二にSexがしたい。と言っただけで、
六年前の事をひとつも口に出した事はない。

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