ヴァイブ
「そんな時、

震えながらうずくまってる女の子を見つけた。

…それが、七海。

周りのヤツらは、七海を見ながら決して声をかけるヤツなんかいなかった。

冷たい世の中だ。と思いながら

七海に声をかけたんだ。

でも、声をかけた途端にしがみつかれるから

正直、ビックリした。」

「だよな…。
私もあの時の自分の行動の意味はよくわからない…。」

「どうしたもんかと悩んだけれど、

とりあえずは家に連れて行こうと思って、連れ帰ったんだ。

でも、俺の行動もよくわからないよ。

警察に届けて終わりにすれば簡単だったのに。」

「ホントだよな。

でも…

私は、声をかけてくれたのが、玲二で良かったと思う。」

「俺も…

あの日、七海を見つけられて良かった。」

「えっ?」

「七海を抱きしめながら寝てると

落ち着いた気持ちになれた。

必死にしがみつく七海を

初めて会ったハズなのに

とても愛しく思えた。

取られた二百万は、きっと戻ってはこないけど

また稼げばいい。

裏切られて、ものスゴく腹が立ったのは確かだし、ものスゴく恨んだりもした。

だけど、そんな事で夢を捨てるのは
死ぬより辛い事だと思った。」


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