ヴァイブ
横では、買い物カゴを持つ兄が彼女に何やら話しをしてる。

楽しそうだった。

だからと言って、妬ましい気持ちはなかった。


恨んで、憎んで、恨んで、憎んで…
傷つけられた。


自分の感情は、今どの言葉があてはまるかわからない。


だけど、もしココで出て行ったら…

許す事になってしまうかもしれない。

それは…


まだ、出来ないのか。

もう、出来るのか…。


……だけど、あんな幸せを見せつけられたら………



やっぱり、声はかけないで、真っ直ぐ駅に向かう。

玲二の家の自分の部屋に帰る為だ。


地元の友達にも会おうと考えたけど…


俺には、今、もっと会いたくなってしまった人がいる。



長い時間、電車に揺られながら

その人に何て言えばいいのか考えてた。


――家に着くと、誰もいない。

玲二も七海も出掛けたのか…

そんな事より、
俺は携帯のアドレスを開いてから名前を見つけて、電話をかけた。


プルル…

ワンコールで、いつもの声で受話器越しから聞こえた。


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