ヴァイブ
「便りがないのは元気な証拠って言うだろ?」

「はっ?」

「七海が段ボールを探しに行ってる間に、あの猫の飼い主が来たんだ。」

「だったら、飼い主に返せばよかっただろ。」

「うっかりとベランダを開けてて出て行ってしまったらしくてさ、いない事に気付いて、探した。そして、人から猫が死んでたって聞いて、もしかしてと思ってあの場に来たって。」

「だから?」

「すごい可愛がってた猫だって。特に三歳の娘が兄弟みたいに遊んでたって。」

「だから何!?」

「その人さ、天パりながら泣いて言うんだ。りぃちゃんが悲しむ。どうしよう。って。りぃちゃんってのは娘の事だろうな。」

「そんなの仕方ないだろ?」

「だから、言ったんだよ。
この子は、私が責任を持って空に返すから、りぃちゃんに伝え下さい。
この子は、冒険に出たから、幸せな旅になる様に祈って。と。」

「子供だましだな。」

「そうだよ。だけど、3歳って言う幼さで死の意味を理解するのは、到底ムリだ。
なら、おとぎ話にした方がいいんだよ。」

「親はなんて?」

「ありがとう。よろしく。って」

琴子は穏やかに微笑む。

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