ヴァイブ
躊躇する事なく、店のドアを開けると、
すぐにボックス席が目について、

わいわいと騒がしく、
背広を着た親父にお酌する女や
20代ぐらいの男にべったり寄りそう様に話しをする女。


カウンター席まで、イスほぼ埋まっていた。


濃い緑色の着物を着て、
40代…50ぐらいのいかにも『ママ』と言う人が私に近付いて来た。


「珍しく女の子一人のお客様?
それとも、ウチの女の子のお友達かしら?」

上品な笑顔を向けて私に言う。

「いや…ココで、働きたいんだけど…」

「んまぁ…
どなたからのご紹介?」

「下の張り紙を見て来た。」

「そう…。
じゃあ、とりあえず奥に来てもらおうかしら?」


その人についていくと、厨房とは呼べないけれど
小さめのキッチンになってるペースに連れて行かれた。

お菓子カゴやお皿がキレイに並べられている。

「突然の申し出だったから、少し驚いているのだけど…
普通は、先に電話したり連絡をしてから来るわよね?
どうして、急に?」

怪訝そうな顔つきで『ママ』らしき人は私を見た。

「働きたいと思ったから。
働けないならいい。」

冷めた目をしながら、帰ろうとした。


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