『サヨナラの3分前』【短編集】
1.サヨナラの3分前〜線香花火〜
~サヨナラの3分前~
真っ直ぐ、激しく燃え上がる。
あの頃の、私たちは、
きっと、そんな花火だったんだろう…。
でも、
いつだって最後に待っているのは、
静かにゆっくりと、終わりを告げる線香花火。
私は慎重に火をつける。
この線香花火が落ちたら、私は彼に別れを告げる…。
ゆらゆらと不安定に揺れて、ぷっくりと頬を膨らまして、
まるで、私たちみたい…。
彼は飽きてしまったのか、線香花火を束にして火をつけた。
私の気持ちなんて気付くはずもなく、
太った線香花火を、楽しそうに見つめる彼…。
もう決めたはずなのに、
揺れて消えそうな火の玉を、必死に守る私…。
「初めてここに来た時のこと覚えてる?」
彼は唐突に口を開く。
忘れるわけないよ…。
二人きりで、初めて遊んだこと…
今日みたいに、花火をしたこと…
「好きだ」と彼が言ってくれたこと…
ポトリと地面に落ちた。
それは、私の涙だった。
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