『サヨナラの3分前』【短編集】
6.笑顔
〜笑顔〜
教室が笑いに包まれる。
いつだって僕はその中心にいる。
休み時間になれば、自然と人が集まりだす。
プロレス技をかけられる。
落書きをされる。
ズボンを下ろされる。
僕を見て笑い声が上がる。
僕も笑う。
僕は笑いの中心にいる…。
「どうして笑顔でいられるの?」
誰かが僕に尋ねる。
そんなの決まってるじゃないか…
僕が笑っていなければ、認めてしてしまう事になるじゃないか…。
僕は可哀相じゃない。
僕は哀れじゃない。
僕は寂しくない。
これはゲームだ。
主人公はあいつらじゃなくて、僕だ。
これは、いじめじゃない…。
僕は仮面を付ける。
笑顔の仮面を…
それを付けて、今日も僕は笑う。
鏡の前で仮面を取る。
鏡の中の僕が…僕を笑っていた。