キミがいなくなるその日まで




これは喘鳴(ぜんめい)だ。

気道が狭くなると笛を吹いたように音を鳴らす。


これはやばい。私も発作は何回か経験してるけどここまでひどくなった事は一度もなかった。

私はすぐにナースコールを鳴らした。


『お願い、誰かすぐに来てっ!シンが発作で………
とにかく早く来て!!』


私の必死な呼び掛けにすぐ看護師達は302号室に駆け付け、その中には風間先生も居た。


『早く呼吸器を装着っ!』

『シン君聞こえる?大丈夫だからね、すぐ楽になるから』


先生と看護師さんは交互に話しかけ、シンの病室は一気に慌ただしくなった。

私はそれを見ている事しか出来なくて、今すぐにでも足がすくんでしまいそう。


『シン君聞こえる?シン君』

先生が耳元で話しかけると呼吸の荒かったシンの息づかいが急に静かになった。


─────ドクン。

そんな大きな鼓動がしたのは私の方。

だってシンが、シンが………………


『呼吸が止まってる!!急いで集中治療室へ。
急いでっっ』


『『はいっ!!』』


シンは呼吸器を付けたまま担架で運ばれていく。


バタバタと騒がしい足音が廊下に響き、それはだんだんと小さくなっていった。


私はそれを追いかける事も出来ずに、

ただ怖くて、怖くて、怖くて、

誰も居なくなったシンの病室にしゃがみこんでしまった。


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