キミがいなくなるその日まで
『私はなりたくない。じゃぁね』
そう言って座っていた腰を上げようとした時、ガシッと左腕を掴まれた。
『……なに?離して』
シンの手を振り払おうとしたけど、強く掴まれている腕はびくともしない。
白いパジャマの袖から見えるシンの手首は私より細いくせに手だけは少し男らしくて、力強い。
『マイは自分が死ぬって思ってるんでしょ?』
ドクン……と心臓が動揺する。
何でも見透かされているようなシンの瞳。その目は私を捕らえて離さない。
『……だったら何なの?さっきも言ったけどあんたには関係ないでしょ』
『変だな。昨日は少し心を開いてくれたと思ったのに』
その言葉を聞いて私は掴まれていない右手でシンの手をパシッと叩いた。
『昨日は昨日、今日は今日だよ。それに折り鶴って嫌いなの私』
シンに突き返した折り鶴は床に落ちて悲しそうに下を向いていた。
『そうなの?じゃぁ明日は猫にするよ』
天然なのか、それとも馬鹿なのかは知らないけどシンは私をイラつかせる天才だ。
『もういい加減にして。あんたと話してるとストレスが溜まる』
私はため息をつきながらシンに背を向けた。早くこの場から立ち去りたくて足早にスリッパの音を響かせる。
『マイ、今日も屋上で待ってるからね』
そんな声が聞こえてきたけど私は聞こえていない振りをして無言で病室に帰った。