キミがいなくなるその日まで
『高齢出産でリスクがあると分かっていながら
あの子を産んで、それですぐ心臓に欠陥が見つかってね』
『………』
『あの子にはなに不自由なく育ってほしいと思ってた。それなのにシンは外の生活を知らず自分の家に帰れたのも数回だけ』
もしかしたら私のお母さんと同じようにシンのお母さんも子供の病気が自分のせいだって思ってるのかな。
だからずっとシンに対しての罪悪感が消えないの?
『ふっとね、私は正しくない事をしてしまったんじゃないかって思うのよ』
シンのお母さんはギュッと手に力を入れていた。
……………正しくない事?
『授かりにくい体を治療して子供を作って。あの子の病気は間違いなく親の責任。だから私はシンに会うのがとても怖いの。きっと私を恨んでると思うから』
私には分からない世界。
でもそれを正しくない事なんて言わないで。
『それならシンという命に会えなくても良かったって事ですか?』
まるで私には産まなければ良かったって聞こえる。そんな事間違っても言わないでよ。
『………あの時の私はただ子供が欲しくてたまらなかったの。でも今思えばそれはただのエゴだったかもしれないわ』
子供を産んだ事のない私にはきっと理解出来ない事。それでもシンはこの世界に産まれてきた。
それにはきっと意味がある。
『私はとても感謝してます。シンは私にとって大切な存在なんです』
本人には恥ずかしくて言えないけど、シンが居なかったら私はすごく冷めた人間のままだった。
いつ死んでもいいって、
それは仕方ない事だって今でも思ってたと思う。