キミがいなくなるその日まで
『憎んでも憎まれてても顔を合わせなきゃ文句の一つも言えない。お母さんのせいじゃない、そうシンがあなたに言ってあげる事も出来ないんです』
私はシンと同じ病気で沢山の会話を重ねてきた。
だからこそシンがお母さんに伝えたい事は痛いほど分かる。
シンはね、今も戦ってる。
そんな強い子を産んだのはシンのお母さんでしょ?
すると、お母さんの目からポロポロと涙が溢れた。
もしかしたらこの人も一人で戦っていたのかもしれない。
『シンは今日、自分の病室に戻るんです。眠っていても声は聞こえるから一緒に行きませんか?』
その後私はシンのお母さんと302号室に向かった。ドアを開けると日当たりがいい、いつもと変わらないシンの部屋。
ベッドの上で眠っているのは間違いなくシン。
本当はすぐに駆け寄って手を握りたいけど今回は譲ってあげる。
家族の暖かさをシンにも知ってほしい。
それで自分の事が可愛くないなんて2度と言わせないから。
泣きながらシンに寄り添うお母さんを確認して、
私は病室のドアを静かに閉めた。
明日朝起きたら一番にシンに会いに行こう。
私も沢山話したい事がある。でもその前に今日はゆっくりお母さんとの時間を過ごしてほしい。