キミがいなくなるその日まで




でもこれでいい。いつもの私でいる方がシンも安心すると思うから。


『それでシンはいつ目を覚ましたの?』

私はベッドの横にある椅子に腰かけた。昨日就寝するまでは中村さんも何も言ってなかったし。


『夜中の2時過ぎかな。ナースコール押したら丁度風間先生が夜勤で居るっていうからそのまま診てもらって』

2時じゃさすがに私は寝てたなぁ。起こしにきてくれて良かったけどその時間じゃみんな知らせに来ないよね。


『今日も朝一番に診察があるんだけど、ずっと寝てたせいか全然眠くなくて。それでこっそりマイに会いに行ったんだよ』

だったら声かけてくれれば良かったのに。
まぁ、寝てる私にシンがそんな事するはずないけど。


朝の見回りまで後10分。

看護師が来るまでに自分の部屋に帰らなきゃいけない。


『そろそろ戻るよ。多分中村さんがシンが目を覚ましたって報告してくるだろうからリアクションの練習しとかないと』

じゃないと、内緒でシンの部屋に行った事もシンが私の部屋に来た事もバレてしまう。


『えーマイがリアクション?なんか面白そう』


クスクスと笑うシンを見てやっと心の重みが取れた気がした。

この5日間鉛(なまり)のように苦しかったから。



『私の診察が終わったらまたシンの病室に来るよ。まだ屋上とかには行けないしね』

そう言って病室を出る寸前、シンが私を呼び止めた。


『マイ、あの約束忘れないでね。それとありがとう』


あの約束とはきっとクリスマス会の事。

その後すぐに発作が起きてしまったから、
なんとなく私からは言いづらかった。


私のせいだって思ってたけどそれをシンに言わなくて良かった。言ってしまったらシンが楽しみにしてる気持ちまで無くしてしまう所だったから。


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