キミがいなくなるその日まで
『別に?ただのダイエット』
こんな返事にも風間先生は至って普通に返してくる。
『ダイエットなんて必要ないでしょ。マイちゃんは十分スレンダーだよ。むしろ医師としてはもう少し太ってもらいたいな』
17年間私を見てきた風間先生にとって、私の扱い方はお手のものだ。
『だって病院のご飯不味いんだもん。野菜とか多すぎだし』
たわいのない会話が暫く続いて、私は風間先生にある事を問いかけた。
『ねぇ……』
『ん?』と先生は私の言葉の続きを待つ。1、2秒沈黙になり私は先生の目を見た。
『さっき今の所は問題ないって言ったじゃん?それでもやっぱり心臓移植しなきゃダメなんだよね?』
いつもとは違う私の声のトーンに風間先生の顔も真剣になる。
『確かに今は何の問題もないけれど、いずれ問題は生(しょう)じてくるよ。心臓移植はマイちゃんにとって避けては通れない』
聞かなくても分かっていた回答。
いつもなら『そっか』の一言で納得するけど今日はまだ聞きたい事があった。
『ドナーってさ、どのくらいで見つかるものなの?』
私からこんなに質問するのは初めてかもしれない。
『それは医者にも分からない。患者は信じて待つしかないんだよ』
今、日本で臓器提供を待っている患者は60名近く居ると聞いた事がある。
その内、心臓移植患者が何人居るか分からない。