キミがいなくなるその日まで




『ねぇ、シンはもし外に出れたら1番最初にどこへ行きたい?』


私には何も出来ないけど1つだけ願いを叶えてあげられるとしたら、それは……………


『うーん、沢山あるけど海かな。まだ一度もこの目で見た事ないから』


シンが望むものを全て与えてあげる事は出来ないよ。だけど時間は待ってくれないから。だったらうつ向いてる暇なんてないじゃない。


『春になったら………
もう少し暖かくなったら一緒に行こうか』


気付くと私は布団の中でシンの手を握っていた。

それは強く、強く。


これは口先だけの言葉じゃない。私は本気だよ。


シンが見たいと思うものを見せてあげたい。だって口に出さなきゃ叶わない願いもあるでしょ?


『うん、約束』


シンはギュッと私の手を握り返した。



ねぇ、シン。

手を繋いだのは私だけどそれをいつまでも離さなかったのはシンだよ。


私の本当の願いはね、

シンといつまでもこうしている事。

それが叶うならドナーなんていらない。
新しい心臓もいらないよ。


でも私は神様なんて信じない主義だから

この願いを誰に言えばいいのかな?



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