キミがいなくなるその日まで
┗雪月花
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今日の病院はいつもより慌ただしい。
朝から流れる同じニュースを何度も見て、患者さんや看護師達がテレビを食い入るように眺めていた。
私はそれを無言で通りすぎて、診察室へと入る。
『はい、じゃ大きく息をはいて』
いつも通りの診察が始まり風間先生も普段と同じ。でもきっと先生だってテレビのニュースは気になってるはず。
『みんな大袈裟だよね。そんなに珍しい事じゃないのに』
私がボソッと呟くと先生はすぐに何の話か分かったみたい。
『日本でも手術出来るようになったからね。これからもどんどん増えていくと思うよ』
朝から流れていたニュースは大きな大学病院で心臓移植が行われたという事だった。
先生の言う通り日本でも手術が出来るようになったけど他の臓器と違って心臓移植は大きく取り上げられる。
もしシンや私が移植をしたらこんな風にテレビで流れちゃうのかな。
『…………シンに移植の話は来てないの?』
私達にとってこのニュースは他人事じゃない。
それに心臓移植を行ったって事はその人にはドナーが見つかったという事。待ってる立場から言ったら心境は複雑だ。
『マイちゃんは自分の事よりシン君を気にするんだね』
先生の言葉に私の眉がピクリと動く。
そんなの当然でしょ。私とシンを比べたらシンの方がはるかに病状は重い。
移植をするなら順番的にシンの方が先に決まってる。