キミがいなくなるその日まで
それならシンはどうなるの?
そもそもシン本人はこの事知ってるの?
私は頭が真っ白になってどうやって診察室を出たか覚えていない。
まだ鼓動がうるさい。
どうしよう、どうすればいい?
沈んだ気持ちのまま自分の病室に帰ると私はその場で立ちすくんでしまった。
『誕生日おめでとうっ!!』
パンッ!とクラッカーが鳴り、私の病室はいつの間にかカラフルに彩られていた。
『カズキ何してるの?』
私は状況が理解出来ないままだった。
『なにって今日はお姉ちゃんの誕生日でしょ。
お姉ちゃんが診察に行ってる間に急いで準備したんだ』
…………そうだ。すっかり忘れてたけど私今日が誕生日だったんだっけ。
すると、背後でカサッと何かが擦れる音がした。
『───マイ、誕生日おめでとう』
そこに居たのはシン。
『はい、これ』と私に差し出したのは折り紙で作られた赤いバラの花束。バラは全部で10本あってまるで本物みたいだ。
『本当はね、クリスマスプレゼントに用意してたやつなんだけど俺だけ渡したらマイに気を使わせちゃうかなって。でも今日はマイだけにプレゼントを渡していい日でしょ?』
私は花束を見つめながら気付くと涙が溢れていた。
『マ、マイ?』
『お姉ちゃん?』
二人が心配そうに見てるけど涙が止まらない。
嬉しいよ、嬉しいけど素直に喜べない。
どうして今日が誕生日なんだろう。シンの口からおめでとうなんて今は聞きたくない。
なんで嬉しい事や楽しい事はずっと続いてくれないの?なんで苦しい選択ばかりしなきゃいけないの?
18歳になったからってまだ全てを受け止める大人にはなれないよ。