キミがいなくなるその日まで
思えばここは私の部屋なんだから私が出ていく必要はなかったよね。
私は今更飾り付けしてくれた部屋を見てみたり、
とにかく平然を取り戻そうとしていた。
『な、なんか私も冷静じゃなかったってゆーか、
色々取り乱してごめん』
こんなに1日の間に喜怒哀楽があったのは初めてかもしれない。
『ううん、俺も言葉足らずでごめんね。移植の事マイに言わなかったのは内緒にしたかったからじゃないよ』
話しは元に戻り、シンは窓際に立った。
『確かに俺は移植は出来ないかもしれないって言われたよ。でもまだ諦めた訳じゃない』
『………』
『何か方法があるんじゃないかって思ってる。だからマイも落ち込んだりしないで。それが言いたかったんだ』
どうして私はまだ始まってないのに終わりを決めつけてしまったんだろう。
シンが諦めない限り希望はある。
それなのに私は勝手に絶望の海に堕ちて一人でもがいていた。
『でも嬉しかったよ。マイが自分の事のように考えてくれて』
その時、シンの背後に映る窓からあるものが降ってきた。それは…………
『………雪だ!』
幼い雪の粒がパラパラと灰色の空から舞っている。まだとても小さいけど窓を開けて手を伸ばすと冷たかった。
『今年最初の初雪だね』
シンもつられて手を伸ばして吐く息は煙のように消えてゆく。
今日は本当になんて日なんだろう。
大学病院で心臓移植のニュースを見て次はシンの話を聞いて。それから誕生日サプライズをされてシンと喧嘩をしてキスをして。
そして今雪が降ってる。
『マイ、18歳おめでとう』
シンが改めてそう言った。
きっと一生忘れられない日になってしまった。
『うん、ありがとう』
気付くと私はいつも通り笑えていた。