キミがいなくなるその日まで
移植患者に臓器が提供される時は日本臓器提供ネットワークを通じて連絡が来る。
そこで血液型が合ってるかどうか、ドナーリンパ球のクロスマッチ検査が陰性である事。そして体重差が20キロ以内のレシピエントが選ばれる。
患者は緊急度1と2に分けられ、
もちろん1の患者が優先。
そこから病状や待機期間を調べて1番病状が重い患者へと移植が行われる。
先生の言う通り患者は待つ事しか出来ない。
だけどこれだけの色々な手順や検査があると思うと、やっぱり運なのかなって思う。
正直、私にその運があるとは思えない。
『先生、ドナーが現れて手術出来る人と出来ずに死ぬ人どっちが多い?』
そう私が訪ねると先生は無言になった。
考えてみればこんな質問は無意味だ。私が聞きたかった事はもっと別の事。
『じゃぁ…さ、もし私にドナーが見つかったとして手術したくないって言ったらどうなるの?』
親には言えない。
本当は先生にだって言いたくないけど一応聞いてみた。
風間先生はさっきの質問とは違い、この質問にはちゃんと答えてくれた。
『その場合、手術は行わないよ。親や周りがどんなに望んでも本人が拒否すれば手術は出来ない』
何故か心がスーッと軽くなったような気がした。
今までの先生との会話や質問は全て繋ぎで本当はこれが聞きたくて仕方がなかったから。
『………そっか』
私はいつも通りに返事を返した。
先生がどう思ったかは分からないけど、その後何かを聞いてくる訳でもなく今日の診察は終わった。