キミがいなくなるその日まで

┗約束の時



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それから数日が経って私は夜明け前に目が覚めた。まだ外は薄暗くて病院内も静まり返っている。


私はすぐにパジャマから私服に着替えて、昨日のうちに用意していたバッグを肩から掛けた。


『……薬は入れたでしょ、それから…』と何度も中身を確認して部屋に置き手紙を書いた。


【今日1日だけ自由な時間を下さい。必ず戻ってくるから心配しないで。勝手にごめんなさい】


きっと大騒ぎになる事は間違いないけれど、
もう覚悟は出来ている。

足音を立てずに廊下を歩いているとロビーに人影が。


『マイ、おはよう』


シンもまた私服に着替えて私と同じように置き手紙を残した。


『本当にいいの?きっと怒られるだけじゃ済まないよ』


最後の確認。今ならまだ引き返せる。


『いいよ。ほら、早く行こう?』


シンに迷いはなくて逆に手を引かれてしまった。


3月25日の今日、私達は約束していた海に行く。何故今日にしたかというと今日は桜開花の日。

つぼみから花に変わる今日この日にどうしてもシンと外の世界に行きたかった。


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