キミがいなくなるその日まで
最後の電車は乗り換えなしの一本道。
朝が早かったせいかウトウトしてきた頃、私はシンに体を大きく揺らされながら起こされた。
『マイ、マイっ』
興奮しているシンが見ているのは窓の外。
そこにはどこまでも続く青の景色。
『『────海だ!』』
私達の声が綺麗に重なってその瞬間電車が目的地に到着した。外に出るとすぐに潮の香りがして、海風が頬を通り過ぎた。
『海だ、海だよマイっ』
待ちきれないシンの足は早歩きだ。この“うしお浜駅”は駅を降りてすぐに砂浜があって目の前は海。
夏になると毎日沢山の人が来る納涼(のうりょう)スポットになっている。
『あ………』
改札を降りてすぐ私は声を出した。それは海に対してじゃない。
うしお浜駅には沢山の木が植えられていてそれは全て桜の木。私が想像した通り桜は満開だった。
『わぁ、桜だ。見て花びら』
シンは風に舞う花びらを手ですくいあげた。
咲いたばかりの桜は本当に綺麗で、それを見上げているシンも綺麗。約束の日を今日にして正解だった。
桜の木に出迎えられながら私達は砂浜へと足を踏み入れる。ズボッと砂はやわらかく簡単に靴が沈んでしまった。
私はシンと顔を見合わせて二人同時に裸足になった。直接感じる砂はくすぐったくて中の方は温かい。
歩くのが下手な私達の足跡が残り、やっと念願の海にたどり着いた。