キミがいなくなるその日まで




『マイちゃん聞いて。確かに先生は医者だよ。
でもね、マイちゃんがどれだけシン君を大切に想ってたか知ってる。だからこそ先生は全力で君を助けたい』


先生の手が震えていた。

私は少し冷静さを取り戻したけど、それでもやっぱり簡単に頷く事は出来なかった。

すると先生は真剣な眼差しで語り始める。


『臓器提供者の人はね、マイちゃんと同じ年の
17歳の女の子だよ』

それを聞いてピクッと反応してしまった。


『その子のご家族は毎日毎日考えて、考え抜いて臓器提供を受け入れてくれた。提供者の家族はみんな苦渋の選択をする。だけど最後には口を揃えて言うんだ。肉体がなくても誰かの体の中で生きられるのならって』

『………』


『マイちゃん、この心臓は君を選んだ。医者や神様じゃない、提供してくれた女の子の心臓がマイちゃんを選んだんだよ』


誰かが生きる代わりに誰かが死ぬ。
それが心臓移植。


“私ね、本当は心臓移植したくないの”


そんな資格ないって、誰かの代わりに生きるなんて無理だって。そう思ったから私は前向きになれなかった。

ずっとずっと考えないようにして、逃げていた問題が今目の前にある。

やるのか、やらないのか、答えは2択。


『私は…………っ』と言いかけた時、シンのあの言葉が聞こえてきた。


“マイはどうしたいの?マイの事でしょ?”


シンが冷たく突き放したのは私が決めなきゃ意味ないから。

人生一度の大きな選択を自分自身でしないといけない時がきた。


『少し一人で考えさせて。時間がないのは分かってるけどお願いします』


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